レイチェルZというとエレクトリックなコンテンポラリー・ジャズ/フュージョンをイメージするのは90年代の話。日本盤が出ていないこともあってあまり知られていないが、近年はアコースティックなピアノ・トリオ作品も発表しており、そうした流れからするとヴィーナスからこのようなオーソドックスなアルバムが登場しても驚くことはない。ただし選曲は変わっている。いわゆるスタンダードと呼べるのは「枯葉」など数曲で、あとは、ニルヴァーナ、スティング、ピーター・ガブリエル、スマッシング・パンプキンズなどのロック曲を集中的に取り上げているのだ。でその演奏はというと、「フラジャイル」はラテン調、ロバータ・フラックの歌で知られるタイトル曲は原曲のスロー・バラードとは異なるミディアム・スウィングという具合に、常識にとらわれず自由な発想で演奏しているのが印象的だ。その結果、オーソドックスだけど、そうとも言い切れない不思議なムードを醸し出している。(CDジャーナル・レビュー」より)
●レイチェルZ(p)ニッキ・パロット(b)ボビー・ラエ(ds)
2003年4月録音
■ステレオ
■VENUS(JP)TKCV-35323